次世代のものづくりを支援するファインセラミックスセンターの研究事例の紹介
次世代航空機エンジン用耐熱軽量部材の耐環境/遮熱コーティング
(一財)ファインセラミックスセンター 材料技術研究所 所長補佐 北岡 諭 氏
次世代航空機エンジンへの適用が期待される耐熱・軽量部材の耐久性向上に不可欠な耐環境/遮熱コーティングの技術動向と新たな取り組みについて述べる。
ナノ領域を直視する、多様な電子顕微鏡観察法
(一財)ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所 所長補佐 佐々木 優吉 氏
材料開発における強力な支援ツールとして電子顕微鏡技術は極めて有用である。一般財団法人ファインセラミックスセンターにおいては、この分野の研究体制を強化し材料の微細構造解析分野における充実した支援を実施している。特に、周期律表の全元素種の直接観察を可能とする収差補正型走査透過電子顕微鏡、一般的な電子顕微鏡法では可視化できない電場や磁場の観察を可能とするホログラフィー電子顕微鏡さらに通常は十億分の一気圧程度の真空下でしか観察できないとの制約を解放し、ガス環境下での観察を可能とする環境型電子顕微鏡などの高度な観察手法による微細構造解析を行っている。これらの観察事例を示しながら、当財団の研究シーズを紹介する。
第一原理計算と原子分解能構造解析の連携による電子材料セラミックスの研究
(一財)ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所 計算材料グループ グループ長 森分 博紀 氏
近年計算機性能の飛躍的向上と計算技術の発展により,第一原理計算による材料設計,材料研究が著しく発展している。また,一方で電子顕微鏡特に走査型透過電子顕微鏡により原子分解能での構造解析が可能となっている。我々のグループでは第一原理計算と原子分解能構造解析の連携による電子材料セラミックスの研究を推進している。本講演では,この第一原理計算と原子分解能構造解析の連携による電子材料セラミックスの研究について紹介する。一例として,全固体Liイオン電池の固体電解質材料として期待されている(LaLi)TiO3中のドメイン構造を原子レベルで決定し,第一原理計算によりこのドメイン構造がLi伝導を律速し,支配していることを解明したことなどを紹介する。
次世代ものづくり関連研究シーズのご紹介
未利用温廃熱のアップグレード回生システム
岐阜大学 教授 板谷 義紀 氏
LiBr/水系吸収式ヒートポンプ(AHP)により、80℃程度の温廃熱から120℃以上の高温を生成する低レベル熱源のアップグレード回生システムを開発し、ベンチスケール装置による評価により、25以上の高いCOPが得られることを実証した。また、吸収液にLiBr微細結晶スラリーを生成する技術を開発し、このようなスラリーを用いるAHPでは著しく高い蒸気吸収性能を有することを明らかにするとともに、廃熱回収型蓄熱式高性能ヒートポンプシステムを提案した。
金属表面凹凸キズの高精度計測技術
岐阜大学 准教授 加藤 邦人 氏
18bitカメラセンサーと照度差ステレオ法を用いることにより、高速・高精度に打痕などの金属表面の凹凸欠陥を検出する方法を開発した。本手法では、深さ0.5mm程度の微小な凹凸欠陥の検出が可能である。本手法は、カメラと3つの光源のみからなるため、低コストシステムが構築でき、処理速度も速い。また、微小な欠陥から、自動車のボディのような大きなものまで応用が可能である。
四国地区高専地域イノベーションセンター:イチオシ研究シーズ発表会
四国地区高専地域イノベーションセンターを組織する四国地区5高専の教員が保有する最新技術や研究成果を発表します。
小水力発電システム
阿南工業高等専門学校 地域連携・テクノセンター 特命教授 宇野 浩 氏
地球温暖化,エネルギ-問題から再生可能エネルギ-の利用が注目されている。小水力発電は昼夜,天候に関係なく安定して発電できる特長を有しており,普及が望まれている。特に発電が1kw程度のピコ水力はこれまで利用されていなかったが,設置候補地は多くあるため,その実用化に取り組んだ。河川の形態に応じてペルトン式,スクリュ-式,吊下げ浮上式の3種類を開発した。ペルトン式は徳島県山間部で,スクリュ-式はフィリピン国ミンドロ島で実用運転を行っている。また,運転状況を監視する監視装置も開発した。今回はこれらの開発内容・設置事例について紹介する。
ATG法による石英チャンバーの球面加工
新居浜工業高等専門学校 機械工学科 准教授 平田 傑之 氏
半導体製造プロセスに欠かせない理化学製品である石英チャンバーに代表されるような, 薄肉半球ドーム状硬脆材料の球面加工方法を提案する。 従来は手加工で行うことが多い作業を機械化するために, ワークを研削砥石に対して45°傾斜した軸に固定し,ワークは45°傾斜した軸を中心に自転し, 研削砥石はワークに沿ってワークの頂点から端点まで旋回運動する。 この研削砥石の旋回運動と45°傾斜したワークの回転運動によって研削を行う方法をATG法(Angled Turn Grinding axis method)と名付けた。 ATG法によれば, 円筒研削に見られる同心円状研削痕を低減させ, クロスハッチ状のツールマークになり, 仕上げ工程にかかる時間の短縮が可能になる。 また, 5軸マシニングセンタでボールエンドミルによる加工を行うことも可能で, 金属球面加工の分野にも適応できる。 今回試作品を製作したところ, 従来の円筒ツールパスによる加工では中心部に削り残しが生じるが, ATG法では全面にわたり一様に仕上げることが可能であることが確認できた。
3Dプリンターを用いた力学機能制御技術の開発および教育への活用
弓削商船高等専門学校 電子機械工学科 助教 福田 英次 氏
3Dプリンターは,従来の加工方法では作製困難な複雑な三次元構造体の作製を得意としており,次世代の製造技術として期待されている。さらに,近年,複数の材料を同時に造形することが可能になってきた。本研究では,3Dプリンターがもともと得意とする「形状制御」と複数の材料を同時に造形することによる「組織制御」を組み合わせ,構造材料への新たな力学機能の付与とそれら力学機能を制御する技術開発を試みている。また,教育現場における3Dプリンターの利活用について紹介する。
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宮田 剛 氏 |
石井 耕平 氏 |
付け爪による無拘束実時間心拍モニタリングデバイスとストレス計測
高知工業高等専門学校 機械工学科 准教授 宮田 剛 氏
香川高等専門学校 機械電子工学科 助教 石井 耕平 氏
無拘束実時間心拍モニタリングデバイスを開発しストレス計測へ応用を図る事が本研究の目標である。着目したのは“付け爪”である。デバイス取り付け部位を爪とすることで,皮膚表面装着時に比べアーチファクトによる影響を低減でき,安定な計測が期待できる。また複数の爪に取り付けることで多波長・多点同時計測を実現できる。また,爪には感覚神経がないため装着時の違和感を抑えることができるので長時間装着が可能である。以上のように,本装置は既存のウェアラブルデバイスには困難な特徴を実現できる。本研究では,爪から得られた光電脈波をカオス解析によりストレス評価を行った。脈波から得られたカオスアトラクタの状態をヒストグラムパターンとして可視化し,その時系列変化を時間分解ヒストグラムパターンとして表現するという新しい手法を提案した。将来的には,無線モジュールと電池を組み込んだワイヤレスのデバイスとする。これによりストレス評価のみならず,在宅医療用モニタリングデバイス,スポーツ中の生体計測などへの応用が期待される。
LED接合部の半断線故障識別回路および検査法
香川高等専門学校 通信ネットワーク工学科 准教授 小野 安季良 氏
近年,半導体製造技術の目覚しい進歩により,狭ピッチ間隔の電極を持つICや超小型の半導体部品製造が可能となった。また,プリント配線板の印刷技術も進み,高密度で印刷パターンを描くことも可能である。これら部品およびプリント配線板単体の故障は,個々の検査で検出できる。しかし,部品の電極およびプリント配線板のパッドが微細化しており,部品をプリント配線板に実装した際,はんだ不良により接合不良の生じる可能性が増えている。故障のうち,隣り合う電極間の短絡故障は,異なる信号を隣接電極間に導くことで故障検出が可能であるが,開放故障の場合はそれが難しい。なおさら,抵抗成分を伴って接続している半断線故障では,その検出がさらに難しくなる。本技術では,ICや半導体部品,LEDの部品実装時の部品接合状態を識別できる検査法を紹介する。
LEDライフイノベーション研究プロジェクトの紹介
徳島大学 ソシオテクノサイエンス研究部 顧問 木内 陽介 氏
LEDのライフ分野への応用研究を徳島大学では全学連携で推進している。医学・漁業・農業等の分野を横断した研究である。これらの研究の概要を紹介します。
中部イノベネット「産業技術の芽」シーズ発表会 in 名古屋
(第32回名古屋駅前イノベーションハブ技術シーズ発表会)
〜 テーマ:電池・新エネルギー関連技術 〜
「中部イノベネット」のご紹介
(公財)中部科学技術センター イノベーション創出支援室 室長 斉藤 貴伸 氏
「中部イノベネット」は中部地域の企業の技術開発や研究開発を支援するための広域連携ネットワークです。大学や公設試などの技術シーズ集である「産業技術の芽」や企業で困りごとが生じた場合に、Web上で相談先・談相手を探す技術専門家・研究者検索ツール「中部の技術ガイド」などのツールについて紹介します。
ハイブリッド自動車ニッケル水素電池のリサイクルについて
トヨタ自動車(株) 環境部 リサイクル企画グループ 主幹 江川 昌宏 氏
トヨタでは1970年から、持続可能な循環型社会の構築をめざし、資源循環の分野において最先端の取り組みを続けています。その取組案件のひとつである『ニッケル水素電池のリサイクル』は、使用済み電池からニッケルを抽出し、電池原料として再資源化する世界初の“電池 to 電池”リサイクルです。
ナノカーボンを用いた電池材料の開発
名古屋市工業研究所 プロジェクト推進室 主任研究員 宮田 康史 氏
炭素材料の中には化学的安定性を有し、高い電気伝導性を持つものがあり、燃料電池や二次電池に多用されている。電池の性能を左右する材料であるため、炭素原子の結合多様性を活かした様々な材料が検討されている。本講演ではナノサイズでの構造制御と電池性能向上への取り組みを紹介する。
リチウム二次電池の活物質の探索
三重県工業研究所 プロジェクト研究課 主任研究員 村山 正樹 氏
各種材料が電池の活物質として使えるかどうか、実際にリチウムイオン二次電池に組み込んでその充放電特性・サイクル特性を評価した。周期律表の同じ族を系統的に探索し、14族元素およびそれらの酸化物について電池特性の類似点と相違点を検証した。これにより、身近な材料にも電池応用可能性が見出された。
PEFCの出力特性に及ぼす低濃度水素燃料供給の影響
岐阜工業高等専門学校 機械工学科 教授 石丸 和博 氏
PEFCでは、低濃度水素燃料を用いた場合でも、その濃度に応じた十分に大きい流量(流速)の設定と出力制限を行えば、純水素燃料を用いた場合と同程度の出力特性を得ることが可能であることを、実験により明らかにした。また、シミュレーション解析により、この時PEFC内で生ずる現象について検討を行った。
マイクロSOFC、全固体蓄電池部材等の構造制御〜製造技術
産業技術総合研究所 中部センター 無機機能材料研究部門 機能集積化技術グループ グループ長 鈴木 俊男 氏
エネルギー・環境型セラミック電気化学デバイスの実現に向けて取り組みを行っている、次世代の燃料電池や新規デバイスの創出に向けた材料部材化技術、高速充電の可能な高密度蓄エネデバイス材料技術の開発等について紹介する。
コーヒー滓を原料とした電気二重層キャパシタ用高性能活性炭の開発
静岡県工業技術研究所 工芸科 主任研究員 菊池 圭祐 氏
活性炭は、その比表面積の大きさや化学的安定性から様々な蓄電器の電極材料に用いられている。我々は食品廃棄物の処理問題から静岡県内で大量に排出されるコーヒー滓に着目し、これを原料とした活性炭を開発した。コーヒー滓活性炭の蓄電性能と試作した電気二重層キャパシタについて紹介する。
インクジェット印刷を使った熱電モジュール製造技術の開発
石川県工業試験場 電子情報部 専門研究員 豊田 丈紫 氏
身の回りにある未利用熱から発電が可能な熱電変換技術を使って省電力機器の無給電を実現すべく、インクジェット印刷を活用した熱電変換モジュールの開発を行った。今回、低温焼成に有効な導電性ガラスフリットと熱電粉末を複合化したインクを新たに開発し、発電モジュールを試作して発電特性を評価した。
純緑色光を発生する高均質・高効率のニオブ酸リチウム単結晶
東北大学金属材料研究所 教授 宇田 聡 氏
単結晶を育成する時によく直面する問題は、品質の良い結晶と育成しやすい結晶がそれぞれ異なる組成を持つことである。我々は、イギリスの化学者のダルトンが2世紀前に提唱した「化学量論」という概念を拡張し、育成が容易でしかも品質にも優れた純緑色光を発生するニオブ酸リチウム単結晶の作製に成功したので紹介する。